刺激伝導系
刺激伝導系とは、通常の心筋細胞よりも約10倍興奮の伝導が速く(房室結節を除き)、洞結節から出た興奮が刺激伝導系を通って素早く心臓全体にいきわたり、心臓を効率よく収縮するさせるための組織です。
刺激伝導系の名称
次の自動能で詳しく説明しますが、心臓の拍動の歩調取り(リズム)を担っているのが、右房と上大静脈の間にある洞(房)結節です。洞結節から発生した電気信号が、右心房は心房内伝導路の結節間路、左心房はバッハマン束を通って心房の各部に電気信号がいきわたります。その後、心房と心室の間の唯一の道である房室結節を通って、His束、そして右脚と左脚(前枝と後枝)に分岐してプルキンエ線維へ伝わり心室が興奮し収縮します。
正常洞調律時における刺激伝導系の興奮順序
洞結節 → 結節間路(右心房)、バッハマン束(左心房) → 房室結節
→ His束 → 右脚、左脚(前枝、後枝) → プルキンエ線維
刺激伝導系の自動能
心筋細胞が興奮する2パターン
1. 自分で興奮する(自動能)
外部からの刺激がなくとも、自ら興奮し刺激を生み出す性質を自動能といいます。
自動能は洞結節が一番早く1分間に60~100回あり、普段は洞結節が心臓全体の歩調取りとなっています。
そして、自動能は洞結節のみではなく下位中枢にもありますが、洞結節の自動能よりは遅く、房室結節近傍の房室接合部では40~60回/分、プルキンエ線維では20~40回/分の自動能があります。
しかし、洞調律中の房室接合部やプルキンエ線維は自動能の興奮が発生する前に、洞結節からの刺激が伝わり興奮させられるため自動能が出る事がありません。
2. 隣接する細胞から刺激を受けて興奮する
心臓は心筋細胞という筋肉でできています。電気マッサージ機を筋肉の上においてスイッチを入れると、自分では意識していなくても、筋肉が興奮(収縮)します。それと同様に心筋細胞も隣接する細胞から刺激を受けると興奮し心臓全体にいきわたります。
刺激伝導系の伝導速度
刺激伝導系の伝導速度は概ね下記の通りです。ここでのポイントは、房室結節は結節間路の約1/10、固有心筋はヒス束、脚、プルキンエ線維の約1/10の伝導速度で、房室結節と固有心筋は遅いという事です。
刺激伝導系を良く心臓の電気が通る高速道路と表現されますが、この関係を見ると高速道路と一般道路のスピード差ではないです。固有心筋と刺激伝導系の伝導速度が10倍違うわけですから、一般道を走る車とジェット機ほどの差がある事になります。
結節間路: 0.5~1.0m/秒
房室結節: 0.05~0.1m/秒
ヒス束: 1.0~2.0m/秒
右・左脚 : 2.0~3.0m/秒
プルキンエ線維: 2.0~4.0m/秒
固有心筋: 約0.4m/秒
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